2020年 01月 29日
掃除婦のための手引書 |
ルシア・ベルリン「掃除婦のための手引き書」(講談社刊2420円)です。
すでに鬼籍に入られた作家ですが、アメリカの名だたる大家たちが推薦しリバイバル、日本でもこの訳書で急に知られたということです。一見して、表紙に採用されている著者の顔写真が猫的と言うか、豹と譬えるべきかチャーミングなのも「ジャケ買い」につながっているのではないでしょうか。
4カ月で7刷の大ヒットとか。
新聞や雑誌などで多数取り上げられ、web上でも話題のようです。
図書館でも予約待ちで半年ほどかかりました。
短編24作が収められていますが、誰の作品にも似ていません。ほとんどが自身の経験に基づいているらしいのですが、その経験にバリエーションがあり、恋愛、家庭、仕事すべてにおいて激しい人生を送った方のようです。
こう聞くと日本でもしばしば見かける私小説的に自身の内面や勝手な思い込みをつらつらと書く退屈な作家と想像されるかもしれませんが、彼女は控えめな文学少女のような存在とは真逆で実にアクティブです。身近にいたらひどい女だと思うかもしれません。
無駄な表現は一切なく猛スピードで話が展開します。ハードボイルドと言って良いでしょうか。彼女は相当頭の切れる人です。話の内容はシビアですがユーモアもあります。どこか笑える、というのが救いでしょうか。抒情もあります。訳でも伝わるほどユニークな表現、面白みが随所にあります。翻訳の文体は悪くはありませんが、恐らくこうした小説こそ原文で読めばもっと楽しいのでしょう。
(2020/1/27)
by santalum389
| 2020-01-29 10:38
| 本
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