2017年 10月 23日
オープン・シティ |
テジュ・コールについては知りませんでしたが、装丁が素敵なのと、ドイツ系イギリス人作家ゼーバルトの再来との評に惹かれて読んでみました。結論としては異なった部分が多くがっかりしました。
ゼーバルトはヨーロッパに堆積する「時間」「痕跡」のようなものを執拗にたどる作家で、地層を掘り起こしていくような過程と静かな語り口に魅力があります。一時期はノーベル賞最有力とも言われていましたが残念ながら2001年に交通事故で亡くなりました。日本語で読んだわけで、鈴木仁子さんの訳文もすばらしいものです。
「オープンシティ」はニューヨークを徘徊するナイジェリア出身の医師の独白です。内容には哲学的な思索も多数含まれており、その点はゼーバルトとの共通点もありますが、加えて描かれるアフリカでの経験や、ニューヨークでの交友関係には俗っぽい部分も多く、マーラーの音楽に対する薀蓄などはやや鼻につきました。
ニューヨークという国際都市に漂う現実感を繊細に捕らえた小説、とでも評するべきでしょうか。それ以上でもそれ以下でもありません。
by santalum389
| 2017-10-23 18:23
| 本
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